GAISHIKEI LEADERSのメンバーよる「ワーキングライフ講座」、第7回目となる今回は、日本マクドナルド株式会社 上級執行役員 マーケティング本部長の足立光氏が登壇した。

「なぜグローバルキャリアなのか?-外資と日本企業の違い-」と題し始まった日本マクドナルド株式会社 上級執行役員 マーケティング本部長の足立光氏の講義。前半はグローバルキャリアに関する足立氏の考え、そして後半は近年のマクドナルドのマーケティング戦略を90分かけて丁寧に学生たちにお話してくださった。

 

足立 光 : 一橋大学商学部卒業。P&Gジャパン(株)マーケティング部に入社し、日本人初の韓国赴任を経験。ブーズ・アレン・ハミルトン、及び(株)ローランドベルガーを経て、ドイツのヘンケルグループに属するシュワルツコフヘンケル(株)に転身。2005年には同社社長に就任。赤字続きだった業績を急速に回復した実績が評価され、2007年よりヘンケルジャパン(株)取締役 シュワルツコフプロフェッショナル事業本部長を兼務し、2011年からはヘンケルのコスメティック事業の北東・東南アジア全体を統括。(株)ワールド 執行役員 国際本部長を経て、2015年より現職。

 

「なぜグローバルキャリアなのか?」、足立氏はまず世界の現状、日本の現状を表す3つの事実を学生たちに共有していく。

第一に日本の存在感が薄れているという事実。「なぜ世界で日本企業が勝てないのか?存在感が右肩下がりなのか?それは、『グローバル人材』が足りていないからだ。中国やインド、そして東南アジアの台頭は凄まじいものがある」と足立氏。これはさすがに学生たちも普段のニュースや授業で耳に胼胝ができるぐらい聞かされているだろう。

2つ目は、世界の「情報」と「人材」のリアルについて。「みんなはインターネットによって情報格差が広がっている事実を知っているだろうか?インターネット上にある情報のうち半分が、英語と中国語で書かれている。さらに、世界基準の人材評価で日本人は『英語ができない・人件費が高い・アグレッシブではない』である」と足立氏。

そして、最後に、毎年のように起こる「想定外」という事実について。どのくらいの人がイギリスのEU離脱を予測できたか、どのくらいの人がトランプ大統領の誕生を予測できたか、北朝鮮問題、テロ、天変地異・・・。予測できないことが当たり前のように起こる時代。それが、今私たちが生きる時代なのだ。

 

足立氏はこの3つをまとめて、学生たちに主張する。「自分のキャリアは『会社』が守るものではなく、『自分』が守るものである。1社に勤めて人生を終える時代など既に終結していると言っても過言ではないだろう。」

 

 

以上の3つ事実を踏まえた上で足立氏は、外資系と日本企業の違いを「言語・報酬・評価・社風・経験」の5つに分け、学生たちにレクチャーする。その上で、足立氏は「グローバルキャリアという選択肢も1つあって良いのではないのか」、と学生たちに提案する。言語・報酬・評価・社風・経験、どれをとっても外資はよりシビアで、成果主義といった印象だろうか。

 

 

そして、足立氏はおまけとして、マクドナルドの直近のマーケティング戦略を学生たちに明かしてくれた。普段の大学の授業とは違う、「リアル」を目の当たりにする学生たち。マクドナルドの再建請負人であり、業界トップレベルのマーケターである足立光氏の思考を教室で垣間見ることができた今回の授業は本当に貴重な講義となった。

 

 

様々な戦略や施策の中で、復活のために実施した最初のマクドナルドのプロジェクトについての話がとても印象深く心に残った。その話とは、「お客様の声にフォーカスし過ぎて、マクドナルドを見失ったこと」である。

 

マクドナルドは、再建のために、まずお客様の声にフォーカスした。ママさんたちを集め、意見を聞いた。しかし、聞き過ぎたのかもしれない。直後に「フレッシュマック」などという健康志向のハンバーガーを発売したのだ。

 

「マクドナルドらしさがなくなった。健康志向のハンバーガー、上手く行くはずがなかった。マクドナルドの強みは何なのか。強みは、『美味しさ』そして『食べちゃった』という背徳感だ」と足立氏。その直後、誕生したのがビッグマックを超えた「グランドビッグマック」だった。

 

「お客様の声にフォーカスし過ぎて、自分自身を見失った。もちろんお客様の声を聞くのは大切だ。しかし、聞き過ぎて自分の個性を見失っては元も子もない。」

これはマクドナルドの話だけに限らず、キャリアの話にも繋がるであろう。親や先生、友達のアドバイスを聞くのも確かに新たな視点を加えてくれるという観点からは大切かもしれないが、「自分」を一番知っているのは「自分」である。聞き過ぎて、自分を見失って良いはずがない。

 

マクドナルドの戦略を聞き、改めて足立氏の言葉が心に響いた。

「自分のキャリアは『会社』が守るものではなく、『自分』が守るものである」

(文・堀内恵悟)

 

 

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