第八回MTL開催レポート(ブルーカレント・ジャパン株式会社 代表取締役 本田哲也氏)

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Meet the Leaders with 本田哲也(ブルーカレント・ジャパン株式会社 代表取締役)『外資系で学んだ、グローバルで「伝わる力」 〜コミュニケーションのプロに聞く!人を惹きつけるコミュニケーションのコツ〜』イベントレポート
2月13日に渋谷Loftwork Labで、GAISHIKEI LEADERSのサポーターである、ブルーカレント・ジャパンの本田哲也代表取締役を迎えて行われた、第8回のMeet The Leadersの様子をご報告します。御講演のタイトルは、「外資系で学んだ、グローバルで『伝わる力』〜コミュニケーションのプロに聞く!人を惹き付けるコミュニケーションのコツ」!
 
「伝える、というテーマでお話させて下さい。コミュニケーションのプロです」という言葉で講演をスタートさせた本田さん。さすが「伝える」ことをお仕事にしているPR(広報)会社の代表、という軽妙な語り口とジョークの連発で、御自身がファウンダーでもあり代表でもあるという波瀾万丈のキャリアと、国際的なお仕事で培われた考え方を御披露頂きました。
 
どんな仕事をしているのか?
 
まずは自己紹介ということで、広告と広報は違います、と切り出された本田さん。広告は媒体を買いますが、広報は買いません。広告は信頼性が高い場合も低い場合もありますが、広報は信頼性が高いです。広告はコントロールがしやすいですが、広報はコントロールがしにくい、というような違いがあるとのことです。
 
本田さんは、その広報のプロとして、「戦略PR」という本を2009年に出版されました。「戦略PR」は、日本においては「空気づくり」に他なならず、売りたい商品やサービスの特徴を「世間の関心」につなげる、ということを、「戦略PR」の事例を、子供用紙おむつや、ヨーグルトの事例を交えて御説明して頂きました(詳細は御著書をご覧ください)。
 
キャリアの変遷
 
大学を卒業した後、ゲーム会社(セガ)に入社し、国際営業部に配属された本田さん。何と中近東の御担当になられ、プリクラを中東に売り込むというエキサイティングなお仕事で、キャリアを始められました。「プリクラを中近東用にアレンジしてくれ」というお客様からの無理な注文を、鳥取砂丘のプリクラフレームを「中近東用にアレンジしました!」と提供し、お客様に大喜びされた、という逸話を御紹介頂きました。
 
その後、外資系の広告会社に転職され、コミュニケーションの世界に飛び込まれました。目に見えない「コミュニケーション」をお仕事にする事に悩まれたことがあるようですが、3年目くらいには、「よくわからないものに対峙した時はチャンス。それをわかるようにすることで価値が生まれる」と確信されました。
 
その後、広告偏重の日本では、広報に大きなビジネスチャンスがある、ということで、35歳の時に同じグループの中でブルーカレントという新しい会社の立ち上げを任されました。まだ日本に無い考え方を日本市場に伝えるために、あえて(他の広報会社と差別化しにくい)「広報(PR)」という言葉を使わずに、「インフルエンサー・マーケティング」という言葉で、「第三者を使ったマーケティング」をすることを伝えたそうです。
 
ところが、ステマ等の問題もあり、また「インフルエンサー・マーケティング」がインターネット等で使われだした事もあり、2009年に「戦略PR」という本を出版されると、それまで広報に目もくれなかった日本の広告業界が一斉に「第三者を使った広報」の潜在的な力を認識する事になりました。広告業界の方は当然広報の事は知っていると考えていた本田さんは、広告業界の方が意外と広報を知らないことを認識され、「自分は何も見えてない、と考えるくらいがちょうどいい」ことを学んだ、と振り返られました。
 
後半は、「伝えるコミュニケーションの5つのポイント」と題して、本田さんが考えるコミュニケーションのポイントをお話し頂きました。

1)「ストーリー」のパワーと「コンテクスト」の説得力

  • 「伝える」と「伝わる」は違う: 自分が「伝える」アクションをしていても、相手に「伝わっている」かどうかは別
  • モノは言いよう: 同じ事実でも、伝え方で相手の理解は大きく違う。商品や便益のイノベーションだけではなく、「伝え方」にもイノベーションがある
  • 「キーワード」「キャッチフレーズ」の重要性: 例えば、自分の(ケイパビリティの)キャッチフレーズを決めることは、とても重要。

2)「日本的なコミュニケーション」が活躍するとき

  • 「本音と建前」は(海外でも)常にある(ティッシュ構造): 本音と建前は、大体三層構造くらいになっているので、どこの意見を本音ととらえて交渉や説明をしていくのかは大切。日本人は「本音と建前」を理解しているので、強み。
  • 「戦略的のらりくらり」: 日本人は真面目で、グローバルなコミュニティーでやっていると、何か来たらすぐに返事をしなくてはならない、と考えているかもしれないが、「わざと、的を得ない、のらりくらり」をすることは、すぐに返事をするより、時にして有効。別の事が大切になったり、その問題自体が忘れられてしまうこともある。
3)「立場」を俯瞰し、縦横無尽に活用する

  • 「WHO」が「WHAT」になり、別の「WHO」を動かす: 人を動かすためには、「誰が」言っているかは、「何を」言っているかと同様に重要。
  • 「世の中ゴト」→「自分ゴト」対「自分ゴト」→「世の中ゴト」: 相手によって、大きな内容から話す方が有効な場合と、「最近どうですか?」というような相手個人のことから話す方が有効な場合がある。どちらから
4)「発想転換」のコミュニケーション

  • 「メタ思考」の重要性: 仕事を話を、真面目な話だけではなく、例えば恋愛とか、趣味とか、何か他の事に例えると、一瞬でコミュニケーションが成立する場合があるので、かなり有効。
  • 「あえて逆張り」というアテンション獲得: 同調圧力が働く中で、他の人が言っている事を言い方を変えて言っても、印象には残らない。早い段階で、あえて逆の事を言うと、「こいつの言う事は聞く価値がある」と考えてもらえる場合が多い。
  • 「土俵」の果たす役割(「オレは◯◯」より、「◯◯といばオレ」): 「自分の土俵」を設定するのがとても大切。その土俵は、狭くすればするほど差別化になる。自分のブランディングには、とても有効。
5)「言語」という壁を越えて

  • 「流暢」<「メッセージ」<「ニュアンス」: 言葉(外国語)が流暢であることより、「明確なメッセージ」が大切。でも、それより更に大切なのは、「ニュアンス」。例えば、「何かをやりたい」と言った時に、「できればやりたい」のか、「死んでもやりたい」と伝わるのかで、大きくコミュニケーションのパワーは違う。
おわりに:
最後に、本田さん御自身のご経験を、まとめて下さいました。

  • 「キャリア」はマーケティングできる: 自分のキャリアを、どのように市場の中で価値を上げていくのかは、日本ではあまり意識している人がいない気がするが、これからとても大切になると思う。
  • 「5年」という周期: 自分の中で経験を積んで、次のステップに行くのは、大体5年くらいの周期だと思う。もし自分のキャリアを積んで行きたいと考えているのであれば、それくらいの周期で新しい仕事やステージを考えた方がいい。
  • あきらめるのではなく「明らめる」: 「あきらめる」の語源は仏教用語で、「真理を明らかにする」「まだ見えてないモノを明らかにする」というのが本来の意味。コミュニケーションの仕事は、不明瞭なことをだんだん明らかにしていく、とてもダイナミックな仕事。
 
 
Q&A:

質問: 何を持って、「伝わっている」と感じますか?
回答: 非言語の情報が大切。「伝わりましたか?」と聞いて、「ハイ」と言われても、それは当てにならない。表情、うなずくタイミング等の、伝わっているかどうかの実感を経過で感じている。
 
質問: 「伝わなかった」失敗談はありますか?
回答: さっきのようなテクニックを駆使しても、「あれ?」ということはある。それは、共有している背景情報やコンテクストの圧倒的な差が原因。例えば、日本人にアメリカンジョークが伝わらないのもその理由。その差を理解せずに伝えようとして、失敗した事多数。文化背景が違う人に対しては、奇をてらわないこと。
 
質問: 異文化コミュニケーションのポイントは?
回答: ユニバーサルなビジョンを持つとか、社内で国を超えて同じ用語や言い方を使う等、共通にはなせる事から始める事が大切。10年前は、だれでも「それは、そうだろ」という美しいビジョンを作る仕事が多かったが、今はそれぞれの国で、「その国の方の心に響くようにする」仕事が増えている。
 
質問: 市場シェアが小さな製品でも、戦略PRの効果はありますか?
回答: 市場シェアの大小は効果に関係ない。それよりも、特徴がある製品かどうかが大切。大手やトップ企業はマスで広告をガンガン打つので、違うやり方で戦わなくてはならない、という場合が、戦略PRの活躍のしどころ。3番手企業なら、1番と2番との競争は全く関係なく、自分の会社・製品だけが関心を持ってもらえる事は何か、また消費者の方にどれだけ近づけるか(自分の生活の中の関心に近いか)が大切。よく広告でやっているような、「市場シェア・ナンバーワン」は、消費者には関係ない。
 
質問: 「バズらせる」ポイントは何か?
回答: 「バズるかどうか」は、テクニック論ではなく、自分が「Facebookで流れて来た物を、共有(シェア)したいかどうか」が大切。大企業が出すメッセージは、たいてい「バズる」わけがないほど、つまらないし、大切な友人にシェアする価値が無い。「これを共有したら、この人が面白がるかも」というコンテンツがメッセージの中に入っているかどうか。
 
質問: 本田さん御自身が、キャリアのマーケティング(ブランディング)をされている時に気をつけている事は何ですか?
回答: 「一回、ハリボテにする」ことが大切。真面目に「自分の経験では、これしかできないので、これ以上は見せない」というのもわかりますが、そこで「これもできます」と人の前で断言すると、それを「しなくてはいけない」状況になり、1年前は「ハリボテ」だったことが、現実にできるようになる。まさに「環境が人を作る」ので、ちょっと無理でも「できる」と宣言し、「成長するような(しなくてはいけないような)環境にしてしまう」のが大切。
 
質問: 共有はしたいけど、差別化もしたい。どうすれば?
回答: 「誰と共有するか」が差別化になります。例えば、どんなグループに支持されているか、も他の会社や製品との有効な差別化になります。
 
 
本田さん、貴重なお話をどうもありがとうございました!